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医工連携で拓く次世代ヘルスケア計測
―体温?循環?脳機能をつなぐ研究―

芝崎 学

工学部 工学科 教授



―― 先生の研究内容について教えてください。
 私の専門は、環境生理学や運動生理学です。特に、体温調節?循環調節?呼吸調節といった領域を研究しています。これらはいわゆる「バイタルサイン」、つまり人が生きていることを示す重要な指標に関わるものです。近年は、脳科学の分野にも研究の幅を広げています。

―― 体温調節の観点から、夏場の部活動などの運動をめぐる危険性について、一般の方と専門家の間で認識のずれや誤解されやすい点はありますか。
 熱中症予防で大切なのは、体温や体の水分をどう維持?コントロールするかです。よく「塩分を含む水分を摂りましょう」と言われますが、この点は誤解されやすいところです。日常生活では、常に塩分を含む飲み物を摂る必要はありません。日本人はもともと塩分摂取量が多い傾向があるため、日常的に汗をあまりかかない状況で、あえて塩分を追加摂取することはおすすめしていません。
 一方で、大量に汗をかく場面では事情が変わります。体内の状態によっては、飲水だけでは吸収されにくくなることがあり、その際には、ある程度塩分を含む水分を摂ることが有効になります。特に注意が必要なのは、高齢者や子どもです。いずれも発汗能力が低いということで共通していますが、高齢者は喉の渇きを感じにくいことが、生理学的にも知られています。一方、子どもは地面からの輻射熱の影響を大人よりも受けやすく、暑熱暴露量が多いため体温が上昇しやすいことが知られています。
 また、暑さによって脳の認知機能や判断力が低下し、「ぼーっとする」状態になりやすい点にも注意が必要です。この点については、私や中田大貴先生が共同で研究に取り組んでいます。

―― その点について、もう少し詳しく教えてください。
 運動には大きく分けて、動きを実行する働き(運動遂行)と、必要に応じて動きを止める働き(運動抑制)があります。安全に運動を行うためには、この「止める」働きが非常に重要です。
  興味深いのは、体温が上がったあとに体を冷やすと(回復期)、運動遂行のほうは比較的早く回復しやすい一方で、運動抑制は回復しにくい傾向がある点です。そのため、熱中症の症状が出て休んだ後でも、運動抑制が十分に働かない状態が残っていると、ふらついたり、物にぶつかったりすることがあります。

―― 熱中症の症状が明らかに出る前の段階で、体に起きる変化に気づくことはできるのでしょうか。
 重要な点ですが、基本的には生体情報を測定しないと分かりにくい部分があります。体が温まると「Q10効果」といって、体温の上昇に伴って体内の反応が進みやすくなることがあり、本人としては「体がよく動く」ように感じる場合があります。筋肉の動きも、化学反応に支えられているためです。
 ただ、そのように体が動いていると感じる一方で、脳の判断力は落ちていることがあります。熱中症では、「さっきまで元気に走っていたのに急に倒れる」といった例をよく耳にすることがあります。体や筋肉を動かす機能は保たれているのに、危険を察して止める能力が低下しているためです。
 こうした変化は、脳波やMRIなどで評価しないと見えにくく、「どこで運動を止めるべきか」を本人が判断するのは簡単ではありません。汗が止まる、顔色が悪くなるといったサインが出た時点では、すでに危険な状態に近いこともあります。
 私たちは生体情報を測定することで、体温がどの程度でどのような変化が起きるのかを明らかにしようとしています。今後は、こうした指標をウェアラブル機器が把握し、危険を知らせてくれるようになることも期待しています。

―― 工学部で人体生理学を研究することには、どのような特徴がありますか。
 生体情報を測ることで見えてくることが多くあります。そこで私たちは「医工連携」、つまり医学と工学の連携によって、新しいデバイスの開発につなげる取り組みを進めています。
 医学の側には人体の状態を調べるための機器が必要であり、工学の側には「そのデータが何を意味するのか」を理解する視点が必要です。生理学を学んだエンジニアであれば、その橋渡しができます。センサーで得た数値に、身体のしくみという意味づけを与えられる点が大きな強みだと思います。

―― 生活環境学部?心身健康学科(生活健康学コース)と工学部では、アプローチや授業の特色にどのような違いがありますか。
 生活健康学コースでは、コメディカル(医療?福祉を支える職種)に通じる観点も含め、体のしくみやつながりを理解し、医学的なコミュニケーションができることを重視しています。
 一方、工学部では、世の中にどのようなセンサーや技術があり、それらを何に活用できるのか、先端技術の全体像を捉えながら学ぶことを大切にします。そのため、アクティブ?ラーニングの形式で取り組む場面も多くなります。工学部では「センサーという見方」から出発し、そのデータを人体の領域でどう生かすかを探っていくアプローチになります。

―― 先生のキャリアや学生時代について、現在の研究テーマに出会われたきっかけを教えてください。
 もともとは、運動中の体温調節や循環調節を研究していました。私が特に関心を持っていたのは、熱中症で脱水が起きるよりも前に、「頭がぼーっとする」「ふらふらする」といった軽度の症状のときに、体内で何が起こっているのかという点です。
 留学中に循環調節の研究に取り組み始めたことに加え、認知機能を研究されていた中田大貴先生が奈良女子大学に着任されたこともあり、脳の循環機能や判断力の低下に関する研究へと広がっていきました。

―― 今後の展望や目標(中長期で目指していること)を教えてください。
 奈良女子大学工学部は2025年度に初めて卒業生を輩出しました。全国的な知名度はまだ十分ではありません。女子大学に工学部があるという点が話題として取り上げられ、「女性の視点」という言葉も広がりつつありますが、そうした注目を一過性のものに終わらせないことが重要だと考えています。
 そこで今後は、エンジニアを育てる過程で他学部?他分野にまたがった取り組みを進め、異なる学部の学生がそれぞれの知識を持ち寄って学べるスタイルをつくっていきたいと思っています。

―― 最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。
 今の学生は、いろいろなことを真面目に考えすぎている人が多いと感じます。私自身は「好きなことを続ける」ことが、これまでの継続につながってきたと感じています。
 最初は「本当に楽しいのか」「続けられるのか」と不安になるかもしれません。しかし、研究に真剣に取り組むほど新たな疑問が生まれ、探究は自然と続いていきます。待っていると得られる情報は少ないので、楽しくなるまで時間がかかるかもしれません。卒論でも修論でも、ぜひ自分から率先して取り組み、楽しんでほしいと思います。
 もちろん道のりは平坦ではなく、うまくいかない局面もあります。それでもそこで必要以上に悲観せず、「次はどうすればよいか」と前向きに考えていけば、状況が好転することもあります。今がたまたまマイナスに見えても、またきっと良いことがある。そのくらいの気持ちで進んでいってほしいです。



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